音楽観光ガイド・クラシック編

音楽観光ガイド

ロックやポップスを普段お聞きの入門者向けの簡単な読み物として、いろんな音楽の触りからちょっとだけ深い所まで観光する手引き書、音楽観光ガイド。今回は歴史ある音楽、クラシック。一体どんな音楽なのか、いつも通り国に例えてご紹介しようと思います。

クラシック。世界的にはクラシカルとも呼ばれる国。この国こそ、現在まで続く西欧音楽の根源を培ってきた国です。名前の通り歴史深く、見慣れた楽譜の形になったところまで遡れば、なんと16世紀。ジャズもブルーズも主に20世紀の建国ですから、歴史を感じますね。また、サウンド上の大きな特徴として、生楽器による演奏という点も挙げられます。電気的な増幅に頼らないサウンドは、とてもナチュラルで逆に新鮮かもしれません。とはいえ、クラシック。なんか威厳がすごくて近づきがたいイメージもあります。

しかしそれもそのはず、あなたがクラシック国の演奏家だと想像してみてください。我が国には世界中に名前を轟かす巨匠たちの曲が沢山あります。それらを人前で演奏するのは、結構プレッシャーを感じませんか?勿論、見ている人たちも子供の頃に演奏したり、どこかで一度は聴いたこともあるでしょう。このプレッシャーを跳ね除けれるのは、圧倒的な演奏力・表現力つまり完成度でしょう。そんな彼らの演奏は、他の音楽ジャンルではなかなか感じることの出来ない美しさ・純粋さを持つものも沢山あります。

そう、クラシック国で大切にされていることは“美しい”ということです。クラシック国の歴史は、新しい様式の発見と音の美的な調和を探求してきた歴史とも言えます。それ故、どうしても学術的な側面があり、それらを説明することは音楽を志す人には有用ですが、当ガイドでは極力触れないようにします。

それじゃあいつものように、ジャケットで聞く作品を選べばいいかと聞かれると、それでもいいのですが、、、

いくつか適当にレコードジャケットを撮影してみました。渋い〜。これはこれで勿論いいんですけど、違う会社の作品や違うアーティストの作品もあるのに、何か似てませんか?クラシックの特にレコードのジャケットは、絵画や演奏者の写真が多く、あまりデザインに重きを置いたものは少ないです。重要なのは内容。徹底した美学ですね。作曲家と同時代に生きた画家の作品をセレクトされていることも多いのですが、関係ないのもよくあります。

選べるっちゃ選べるけど、、、初めはキツいかも?どんな曲なのかもいまいち分からないですよね。なので、①曲の種類②作曲家③有名曲かどうか、という簡単な3つの見分け方を説明しておきます。

①まずは曲の様式。大まかに、

交響曲、協奏曲、管弦楽曲、室内楽曲、器楽曲、声楽曲、歌劇に分かれます。

このうち、交響曲、協奏曲、管弦楽曲は大人数のオーケストラで(楽器だけで)演奏する楽曲です。交響曲第⚪︎番とかSYM⚪︎⚪︎と書いてあれば、交響曲。4つぐらいの楽章から成り立つ花形のスタイルで、尺も長めの曲です。協奏曲はソリストと呼ばれる1人の演奏者+オーケストラという曲で、ソリストは指折りの名手なのは勿論です。これは⚪︎⚪︎協奏曲や〇〇CONと記載されてます。(ソリストがピアニストならピアノ協奏曲、チェリストならチェロ協奏曲といった感じ)。管弦楽曲はこれら以外のオーケストラで演奏される曲です。つまり、オーケストラが聴きたいなあと思えば、演奏者クレジットに指揮者がいて⚪︎⚪︎オーケストラと書いてあるもの。その中でも、交響曲が良ければ交響曲と書いてあるもの。ピアノとオーケストラが良ければピアノ協奏曲とかいてあるものを選びましょう。

室内楽曲は少人数で演奏する曲。少人数だと指揮者はいないことも。バンドと同じですね。主な曲名は〇〇三重奏(〇〇トリオ)、〇〇五重奏(〇〇クインテット)といった表記。アーティスト名は⚪︎⚪︎楽団と記載されることが多いです。多くの〇〇ソナタは少数で演奏するため室内楽曲です。器楽曲は1人で演奏する曲。要はソロです。無伴奏と名のつく曲や多くのピアノソナタも器楽曲です。大人しめの演奏や、ゆったりとした演奏がお好みであれば、室内楽や器楽を選択すると良いでしょう。

声楽曲は歌。ヴォーカリストが中心です。声の高さによりソプラノやテナーなどと記載されていることが普通です。これらの表記がすぐ出てきたら歌だと思ってください。もちろん多くはヨーロッパの言語です。ミサ曲などが代表的です。歌劇(オペラ)は劇です。こちらも中心となるのは歌手(劇なので役者を兼ねています)ですが、劇なのでセリフだけの部分、演奏だけの部分もあります。演奏はオーケストラによって行われます。劇なので最も長尺です。歌の部分だけ、オーケストラの部分だけが聴きたいんだよという方も多いので、その部分だけの録音も結構あります。歌劇〇〇やオペラ〇〇と表記されています。序曲と記載があれば、歌のない演奏部分だけです。

なんとなくわかってきましたか?基本的にはこの様式+作曲家の組み合わせで選ぶと良いと思います。クラシックの録音で下手な演奏家などほぼ居ないと言ってもいいのですから。

②作曲家は誰もが聴いたことのある名前ばかりなので、ピンと来た名前のものにするといいでしょう。有名な方の大まかな作風としては、時代順でバッハ(計算された調和。クラシックの祖です)、モーツァルト(華やかで神々しい)、ベートーヴェン(エネルギッシュ)、シューベルト(歌心あるメロディー)、ショパン(ピアノを極めしもの)、チャイコフスキー(リズミカルでメランコリック)、ドヴォルザーク(親しみやすい。のちにヨーロッパとアメリカの橋渡しとなります)、ブラームス(ベートーヴェンフォロワー。情感に溢れる)、ドビュッシー(象徴・印象的。絵画のよう)などなど。面白い名前の方も多いので、カンで選ぶのも面白いと思います。

③収録されているのが有名な曲なのかを判断するのは簡単です。同じ曲が何枚並んでるか、です。ベートーヴェンの交響曲第5番や9番・モーツァルトの交響曲第39~41番なら、店にもよりますが一つの棚を埋めれるほどあるはずです。CD・レコード屋さんで3枚でも同じ曲があれば人気曲と捉えて間違いないでしょう。

独自のサウンドを持ち、有名な曲も数多くあるクラシック。みなさんも聴いてみると、この部分知ってるわ!となることも多いと思います。聴いていく内に、指揮者やオーケストラごとの特徴もわかっていくと思います。作曲家たちもクセの強いエピソードが多数あり、調べていくととても人間的で親しみを持てると思います。比較的安価なレコードもあるクラシック。ぜひ一度観光してみてください。