いろんな音楽の触りから、ちょっとだけ深い所まで観光する手引き書、音楽観光ガイド。お久しぶりの今回は、ブラックミュージック総本山、R&Bとソウルについて観光案内していきます。
当店ではR&Bやソウルとポップスの棚を一緒にしています(日本のロックも)。それは、R&Bというジャンルが差別的な時代背景から生まれた言葉であることと無関係ではありませんが、1番大きな理由は、多くのジャンルがごちゃ混ぜとなっている現在となっては、R&Bとポップスとの間にそこまで音楽的違いはない(分けにくい)からです。
なので、今回は国に例えたりはしません。R&Bという言葉が生まれた当初は、白人による大衆音楽であるポップスと区別するべく、黒人によるポップス音楽(大衆音楽)のことを指すために用いられた言葉でした。そのジャンル分けが今でも利用されるのは、伝統的な背景はもちろん、白人のポップスとの間に音楽的な違いが部分的に認められるからです。
その違いを端的に説明すると、リズムが強烈か否か。クラシックや民謡をはじめ、メロディーやハーモニーを中心に制作されてきた白人のポピュラー音楽に比べ、ブルースやゴスペルをルーツに持つR&Bはとてもリズミカル。思わず足を踏み鳴らしたくなるような音楽です。また、出演者みんなで歌う傾向も白人のポップスより強くなります。ロックがポップスとなった今では想像しにくいかもしれませんが、50年初頭までの白人ポップスはとても流麗なサウンドが主流でした。ジャズボーカルやイージーリスニングのようなものを想像していただくとイメージしやすいと思います。リズムが強烈なR&Bとは結構違いますよね。リズムが強烈ということは、50年代に誕生する例の音楽との共通点がありますね。そう、ロック(ロックンロール)です。ですので、ロックがお好きな方でしたら、ソウルやR&Bもお好きだと思いますよ。
ソウルはR&Bの中の1ジャンルとして60年ごろから言われるようになる音楽ですが、昔ながらのR&Bとの違いとしては、ソウルの場合は歌手が1人のことが多く、その歌手がソウル(魂)を震わせるようなゴスペルフィーリングの歌声を有することが多いです。とはいえ、あまり厳密に区別がある訳でもありません。今となってはR&Bとソウルは同じものと捉えていただいても問題ないと思います。
そんなR&B、何を聞いたら良いか分からないという場合は、適当にベストアルバムを選んで聞いてみるといいでしょう。なぜかというと、R&Bはコンセプトアルバム(アルバムを一つの作品と捉える考え方)の導入が遅く、シングル中心の文化がロックよりも比較的長く続きました。なので、70年代初頭ごろまでのR&Bはシングルに創作エネルギーを集中しています。なので、ベストアルバムは名曲の宝庫、価格も手頃なものが多くオススメです。そこから気に入った曲が収録されているアルバムを購入してみるのも、とても良いと思います。同じ曲でも音が違うことも多く、レコードの楽しみが増えること間違いなしです。ベスト盤以外を選ぶのなら、伝統的に名門なレーベルはスタックス、モータウン、アトランティック、アトコ。この4レーベルで60年代から70年代までの録音であればまず間違いないでしょう。伝説的な録音のオンパレードですし、今のアーティストも多大な影響下にあります。
他の選び方としては、他のジャンルと同様にジャケットで勘で判断するか、お店の人に相談すると良いでしょう。値段の手頃なものからというのもいいと思います。
R&Bやソウルも時代と共に少しずつ変化してきます。簡単に言えば、昔になるほどワイルド、新しくなるほどスッキリと洗練されていきます。大まかに最もワイルドな50年代、ソウルフル&パワフルな60年代、ニューソウルと呼ばれ洗練された70年代。80年代になるとディスコと呼ばれるダンスに特化したものも増えてきます。もし、00年代以降のアーティストがお好きな場合は、お店の人に相談しないと少し難しいかもしれません。なぜなら、古典的な意味のR&Bやソウルとはサウンド的に少し異なったものとなっているからです。ここまで多く述べてきたのは、そういった古典的ルーツとしてのR&Bやソウルについてのことです。また、余談ですが、白人アーティストによるR&Bはブルーアイドソウルと呼ばれたりもします。何にせよ日本人にはあまり関係ないので、白人黒人あまり気にせずビビッときたものを聞いてみるといいと思います。
伝説的なアーティストを主な時代順に挙げると、レイ・チャールズ、サム・クック、アレサ・フランクリン、オーティス・レディング、マーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールドやインプレッションズ、スティービー・ワンダー、マイケル・ジャクソンやジャクソン5、プリンス、、、少し挙げただけでこの人数。まだまだ沢山いますが、どこかで名前を見にしたアーティストも多いのではと思います。それぐらいかなり身近な音楽なので、ぜひ一度掘ってみてください。
R&Bの1つとしてファンクを一緒に解説するか悩みましたが、座学的な言葉がどうしても出てくるため、追記として簡単にご紹介だけしておきます。ファンクは60年代から発生するブラックミュージックですが、16ビートを用いたR&Bのことを現在では指すことが多いです。16ビートは歌の入る音楽としては最小に近い細分化されたビートです。それ故、メロディーを活かすのが難しい代わりに、とてもダンサブル・リズミカルな音楽となります。ビートの説明は感覚的なもので、文章で説明するのはややこしくなるだけだと思いますので、要はノリノリのR&Bがファンクだと思ってください。
以上、音楽観光ガイドR&B・ソウル編でした。