お久しぶりにはじまりました。音楽観光ガイド。この記事では音楽に興味あるなという方に向けて、いろんな音楽の触りからちょっとだけ深い所まで観光する手引きを記載しています。ロックやポップスを普段お聞きの入門者向けの簡単な読み物として、暇な時にお読みいただければ幸いです。今回は比較的最近に生まれた音楽、ヒップホップ。一体どんな音楽なのか、観光ガイドらしく国に例えてご紹介しようと思います。
皆さんはヒップホップ国と聞いて、どんな人たちが住んでいるイメージが湧きますか?
なんかストリート系のダボダボの服を着てたり派手なアクセサリーをつけてる人とか、なんかアクロバットな感じのダンスの人とか、スプレーで落書きしたりスケボー乗ってる人とか。こんな感じのイメージなら、若干昔ながらではありますけど全部合ってます。実は全部ヒップホップ国の文化として欠かせない要素です。では、この3つのイメージに共通点が浮かびますか?
そう。全部似合う場面がストリートですよね。MVでも綺麗なスタジオっていうよりはゴミまじりの路上がよく採用されてたり。ここがとても重要なことなんです。なんでって、ヒップホップ国の人が大事にしていることは、“自己の肯定”だからです。
必然的に自分の生まれた地元に敬意を払い、家族や仲間をとても大事にするアーティストが多いです。自分の素直な体験やメッセージをそのままリリック(歌詞のようなもの)に込めるアーティストが多い点も特徴と言えそうです。多くのヒップホップアーティストたちは若い頃に恵まれない出自や環境にあり、ストリートに身を置く時間が長かったことから先程の文化が生まれました。文化が確立された今となっては少し違うイメージのアーティストも沢山居ますが、現在でも彼らは多くの先人たちにリスペクトを込め、そのスタイルを継承しています。服がダボダボなのは、大きいサイズを買っておけば大きくなっても着れるからという家庭事情を反映したものです。子供なら恥ずかしく感じそうですが、それを逆に自らの誇りとして大人になっても続けているところに恣意的な表現を感じますね。また、ゴールドのでかいアクセサリーや新品のステッカーを帽子に残したりするのも「自分はそういうものを買えるくらい成功出来ている」という敢えてな表現です。ヒップホップのリリックにはこのような自らの誇りや”敢えて”な表現が多数用いられます。仲間内でしかわからないような言葉やジェスチャーを敢えて用いることも多いです。他の音楽にはあまり見られないある種強固な姿勢でもありますが、家庭環境や経済的事情から若い頃に社会と馴染めなかったアーティストも多く、ある種当然の帰結でもあります。
ここからは具体的な音楽の話をしていきます。音楽を作り、発表する上で不可欠なものとは何でしょう。ここに彼らにとってとても障壁となる存在がありました。そう、楽器です。
楽器って安くはないし教えてもらう必要がありますよね。それに、現代の都会で練習するにはスタジオに入ったり。なんにせよある程度のお金が必要そうですよね。余談ですが、昔同じくジャズミュージシャンたちもお金がありませんでしたが、ちょうど終戦のタイミングで軍の手放した楽器が安価で入手できたそうです。余談でした。服を買うのにも大変なお母さんに、楽器買ってなんてお願いできるでしょうか?ちょっと難しいかもしれませんよね。ラップは楽器がなくても歌えるからお金はかからないけど、声だけじゃちょっと物足りない。強いリリックに負けないような強いリズムが欲しい。そんな時に彼らの前に現れたのが、安く頑丈な音楽機材を提供していた日本でした。
当時、日本の企業が販売していたリズムマシン(プログラムしたリズムを自動演奏する機械)やサンプラー(特定の音を切り取り、再生する機械。これがあれば既存のレコードのドラムやベースなんかを抜き出してオリジナルのリズムを作り出せます。)はプロ用に比べればかなり安価で、なおかつ中古市場に多く存在していたこともあり、頑張ればなんとか買える値段だったようです。彼らにとってこれらの機材は楽器を習得することなくリズムやハーモニーを生み出せる、正に魔法の機材でした。これらは今ではヒップホップミュージックに特に欠かせない”楽器”となっています。つまり、ヒップホップミュージックとは、“持たざる者による音楽”であり、具体的には、リズムマシンやサンプラーを多用し、そこにリリック(ラップ)やメロディーを加えた音楽です。楽器による生演奏を行うグループもいますが、伝統を誇りに感じるアーティストが多いため結構珍しいです。
日本がアメリカの音楽文化に密接に関わっているなんて不思議ですよね。音楽も他の文化同様に多様な影響や社会事情の元に生み出され進歩してきました。なので、気軽な気持ちでいろんな音楽国を観光していくとすごく楽しかったりします。
いつも通り個人的に大好きなヒップホップのアルバムを3枚ご紹介します。
Eric B. & Rakim “Don’t Sweat the Technique”
A Tribe Called Quest “People’s Instinctive Travels and the Paths of Rhythm”
Jazz Liberatorz “Clin D’Oeil”
3作ともに共通しているのは楽しく自らの美学を追求するタイプのアーティストで、50s~80sの音楽をサンプリング元(ネタ)にしていることです。この時代はレコードが1番盛んな時代で、ロックやソウル、ジャズの知っているフレーズが細切れにされ新しい音楽へと再利用されているのを発見出来て、レコード屋としては楽しかったりもします。また、楽器を演奏した方がすぐ作れるところも敢えてサンプラーで構築しており、その制作にかかる膨大な時間・情熱にも頭が下がります。
ヒップホップは現代のブラックミュージックを席巻するスタイルの一つで多くの方の身近にあり、セレクトの方法などお教えすることは特にないと思います。レコード文化としてはDJプレイ用途がとても盛んな国で、12インチのシングルがメインです。12インチシングルは基本的にリスニング用途というよりもDJの道具としての側面が強いので、リスニング用途の方はアルバム(LP)をご購入されるのが手っ取り早いと思います。
以上、ヒップホップ国の解説でした。

