音楽観光ガイド・ジャズ編

ジャズ

突然はじまりました。音楽観光ガイド。この記事では音楽に興味あるなという方に向けて、いろんな音楽の触りからちょっとだけ深い所まで観光する手引きを記載しています。ロックやポップスを普段お聞きの入門者向けの簡単な読み物として、暇な時にお読みいただければ幸いです。

第一弾として、当店お客様から1番尋ねられる音楽、ジャズ、より観光らしくジャズ国としましょう。いったいどんな国なのか紹介してみたいと思います。

ジャズ国の国民性は、ずばり“自由”です。

基本的に何をやろうがそいつの自由。ルール?流れよ流れ。そんな国です。どうです?親しみやすいでしょう。ところが、いざジャズを聞いてみようと思ってジャズ売り場に行った貴方。めちゃくちゃ不安になりましたね?その理由は単純です。

多い。

多すぎるよ。何枚あんのよ。冷静に考えてみてください。ロックやポップスに比べてジャズってそんな身近じゃないですよね?事実、音楽経済の大半はロックやポップスであり、ジャズの割合はそう多くありません。なのに、それなのに、こんなにいっぱいある。ビートルズが残したオリジナルアルバムは10枚ちょっと。みなさんがお好きなバンドや歌手のアルバム枚数を数えてみてください。それも30代ぐらいまでのです。きっと数枚でしょう。ところが、ジャズの場合はアルバム枚数20枚なんてザラです。この物量が入国者を阻む最も大きな要因です。なんでこんなことになったのか?それは、ジャズ国が自由の国、ある種イージーゴーイングの国だからです。

みなさんが普段お聞きのアルバムや曲、これを作るのはそう簡単ではありません。オリジナル曲を書き上げ、アレンジを何パターンか施し、いいテイクができるまで何度も録音。と工程も多く、とても時間や手間がかかりますね。一方でジャズ国はどうでしょう?曲は誰かの書いた曲(カバーもしくは断片)、その日その場で集まったメンバー、マイクを立てて、はい録音。

え?

めちゃくちゃラフ。そんなんでいいの?いいんです。そういう国だから。しかもです。例えばビル・エヴァンス。聞いたことのあるピアニストかもしれません。ジャズ国の著名なアーティストです。ですがこの人、色んな人のアルバムにひょいひょい登場してきます。ビートルズのポール・マッカートニーやミスチルの桜井さんが客演で録音するなんてなかなかないですよね。あっても特別な関係があるとか、何か理由が考えられます。でも、ジャズ国の人はそんなことありません。録音に呼ばれたら基本来ます。ラフ〜。同じ日にいろんな人の録音に参加することも平気です。ラフ〜。

そう、だから大量の作品があるし、言い換えれば石ころも宝石も混ぜこぜ。ますます何を聞けばいいかわからないですよね。そこで、この国の超名産について簡単にご紹介したいと思います。

まずジャズボーカル。これはとても分かりやすく、日本で例えるならば富士山です。世界中どこにでもある山(ポップス)、それのジャズ国バージョンです。歌が中心で周りの楽器はそれを支える形式で、慣れ親しんだ音楽にとても近いです。一曲も短く、ポップスとそう変わりない感覚で楽しめると思います。まずはここからという意味でおすすめです。ジャズボーカルも沢山ありますが、男性ならフランク・シナトラ、ナット・キング・コール、トニー・ベネット。女性ならエラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、ビリー・ホリディ、ペギー・リー。この辺りの超有名歌手ならほぼ間違いなく伴奏楽器の演奏者も一流。100%ジャズを堪能できると思います。美男美女も多くジャケで選ぶのも楽しい。どれでもお楽しみいただけると思います。お好みでどうぞ。

次にインスト(楽器だけ)のジャズ。これですね、みんな聞いてみたいけどありすぎて戸惑う、ザ・ジャズ国。日本で例えるならば漫画やアニメでしょう。いろいろありますよね。手塚治虫、つげ義春、高橋留美子、荒木飛呂彦、尾田栄一郎、、、そんな感じでプレイヤーも色とりどりです。海外の人に漫画やアニメを紹介するとき、何を紹介するか迷いますよね。ですが、基本的に人気のある国民的作家・作品の名前が上がるはずです。それは誰もが認める一定のクオリティーがあるからではないでしょうか。

ジャズ国が自由の国で、多作であることはここまでで紹介しましたが、それはある意味で才能の世界だということが出来ます。なんせ録音当日にやる曲を渡されたりするのです。大した準備もできません。しかも録音した音を加工することもほぼありません。ごまかし不可能です。才能と日頃鍛え抜いた演奏技術だけを頼りに、一瞬一瞬でいいものを録音しようとする美学があります。なので、ここでは人気や演奏技術に秀でた、どのアルバムを聞いてもジャズ国の誰もがジャズと認めるアーティストの名前を挙げることにします。

ルイ・アームストロング、チャーリー・パーカー、デューク・エリントン、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン。とりあえず5人だけにしておきます。この5人はまさに真髄を極め、ジャズ国の未来をも切り拓いた人たちです。どのアルバムを聞いても間違いなくジャズです。そして、大事なことですが、できればベスト盤を避けてオリジナルスタジオ録音作品を、それも少人数で演奏している作品を選んでください。なぜベスト盤を避けるのか?それはジャズが”曲”ではなく”演奏”を中心にした音楽だからです。あまり離れた時期の録音や違うアーティストの演奏が混ざることは、アーティストの思想的に好ましくなく、ジャズ国のことが余計わからなくなりがちです。また、少人数の作品を選ぶ理由は、大人数での作品だと管楽器が複数になることも多く、初めのうちは誰がどの音なのか分からないからです。二人組のデュエットはどうしても静かな演奏になるので、最初はトリオやカルテットがいいでしょう。裏にどの楽器は誰がやっていると書いてくれています。この慣習があることからも、ジャズが演奏を主にした音楽であることがわかりますね。

ここまで書いてきて名前を挙げたアーティストは全て、40年代〜70年代に作品の多くを残した人たちです。最初に読む漫画に手塚治虫先生は古いだろうと思ったかもしれません。これがまたジャズ国に入国しにくい理由でもあります。最新の人気アーティストが目立たない。勿論現役のアーティストにも人気・実力がある人は沢山います。ただ、ジャズ国内でさえ、そこまで目立たないというのが悩ましい現状でもあります。その理由は、現代のアーティストがボーダレスだからです。ジャズであれロックであれ、昔ながらのステレオタイプな作品を残す現役アーティストは珍しいです。ジャズアーティストは”自由”を目指し、いつも新しいものを模索しているので、必然的にジャズもとてもボーダレスなものになっています。70年代にロックとの融合を図ったフュージョンでさえ、嫌悪感を示したジャズ国民は少なくありません。それは昔ながらのジャズとはかなり離れたサウンドだったからです。世界各国の音楽やヒップホップと融合した現行ジャズの評価が分かれるのは当然かもしれません。逆に言えば、入国前の貴方にはそんなこと関係ないかもしれません。サウンドも今っぽく聞きやすいものもあるでしょう。興味がある人は近年のジャズ作のヒット作、例えばグラミー賞ジャズ部門受賞作なんかを聞いてみるのもいいかもしれません。

少し話がそれましたが、先ほど挙げた5名のアーティスト。とりあえず聞いてみたけどよくわかんなかった。私には合わないかもしれない。そう思った貴方。その場合は、とりあえず週に一度でいいので、根気良く聞いてみてください。なんせ音楽は慣れです。慣れてくるとミュージシャンが何をしているのか何となくわかるようになります。アニメでも途中から急に面白くなる作品も多いですよね。長く見ている間に、あれ?今日の放送は動きが抜群だなとか思うこともあると思います。それと同じです。もしくは、こんなの聞いてみたんですけどイマイチで、、、とお店の人に相談してみてください。レコード屋の店員さんは私も含め男性のことが多く、なんとなく聞きにくいですが、こちらからお客さま全員にお声掛けするのは失礼にあたる可能性がある為、申し訳ありませんが勇気を出してみてください。少なくとも私は相談していただけるのは嬉しいです。みなさん音楽好きな方ばかりだと思いますので、いろいろと相談に乗ってくれると思います。

ちなみに私は元々ロック畑の人間です。作編曲のアイデアを求めて聞きはじめたという意味では少し邪道かもしれませんが、ジャズっていいなあと大好きになったきっかけの作品を挙げると、アート・ブレイキー「バードランドの夜」、チャールズ・ミンガス「ミンガス・アー・アム」、オスカー・ピーターソン「プリーズ・リクエスト」の3枚が筆頭と思います。いやあの5名の作品じゃねえのかよ、とツッコミが聞こえてきそうですね。勿論この3人とも超有名アーティストですが、すごく作品の質(あるいはヤル気)にブレがあります。。。だから入門にはおすすめできません。唯一オスカー・ピーターソンだけはどの作品でも入門にいいですよ。皆かっこいいアーティストなので機会があれば触れてみてください。

レーベルや他にも紹介したいアーティストは沢山いますが、ひとまずこの辺で。

作品を選ぶ際、最も大事なのは直感です。なんか良さそうだな、素敵なジャケだな。それを信じて聞いてみてください。きっと、貴方の何かと繋がっている作品の筈です。そう、ガイドだなんだと偉そうに書いていますが、音楽は人それぞれ。なんかいいなが1番大事です。当店では定評ある作品に”名盤”の記載をしていますが、それも無視して結構です。ロックでもそうですが、多くの「名盤」には歴史的・資料的評価がついています。それは音楽史上とても価値のあることですが、ただ聞く分にはあまり関係のないことです。喫茶店やカフェで流れている素敵な曲をアプリで調べるのもいいでしょう。何もジャズ国の歴史や裏側まで知る必要はないのです。本格的に住んでみたくなったらそれもいいですね。でも最初はやっぱり観光名所が王道だと思います。今でも訪れる人の絶えないとても素敵な国なので、興味が湧いたらぜひ覗いてみてください。

以上、音楽観光ガイド・ジャズ国編でした。